第37章 哀悼
私がリヴァイさんの掌に手を重ねると、それは暖かい掌にそのまま包み込まれ、リヴァイさんは歩き出した。
―――――私の顔は、真っ赤だったと思う。
王宮の夜会でエスコートされた以外で、手を繋いで歩くなんてこと、今までしたことが無かったから。
嬉しくて、少しだけ指先でリヴァイさんの手をきゅ、と強く掴むと、それに応えるように私の手を少し、握り返してくれた。
手を繋いだまましばらく行くと、懐かしい場所に辿り着いた。ワーナーさんの家だ。
「……リヴァイさん………。」
「遺品整理はほとんど出来てねぇからな……お前が持っておきたいものは、持ち帰るといい。……じじぃも、喜ぶだろう。」
「…………。」
扉を開けると、あの時のまま。質素なキッチンと、質素なダイニングテーブル。
ここでどれだけ、ワーナーさんと夢を語っただろう。
そこにワーナーさんの笑顔だけが足りない。
キッチンには、いつか私が贈った紅茶の缶がほこりにまみれてそのまま置いてあった。とっくに中身は無くなっていただろうに、私がまた新しい茶葉を持ってここに来る日を、楽しみに待っていてくれたのかもしれない。
私は紅茶の缶を手に取った。
自然に、ワーナーさんに向けた言葉があふれ出す。
伝えたいことも、まだまだ教えて欲しいことも、たくさんあったのに―――――――。