第37章 哀悼
朝早くに家を発って、リヴァイさんと馬を並べて走る。
ほんの少し走ったところで、私は不思議に思った。
調査兵団の兵舎に帰る道ではない。私はリヴァイさんに尋ねた。
「リヴァイさん。どこに行くつもりなんですか?……こっちは……帰る方向じゃ………。」
「寄りたいところがある。付き合え。」
「……はい。」
見覚えのある景色、ここは――――――時計塔。
そして、地下街への入り口だ。
リヴァイさんに倣って馬を降りて柱に馬の手綱を括りつけた。
地下街への長い階段を、下っていく。
あぁ、もう9年前になる――――――
こうして、リヴァイさんの後ろを歩いた。そう、あの時もこんな風に……時折私のほうを振り返り、様子を見ながら……子供の足で追いつけないことはなかった。私に合わせて、歩いてくれていた。そんな思い出が蘇る。
思わず顔が綻んでしまう。
しばらく無言のまま進むと、斜め後方から心地よくない声が飛んできた。
「おぉ?!やけに綺麗な女じゃねぇか……!王都の女だ……!」
「世間知らずが何しに来たんだぁ?おい、遊んでやるぜ?」
ビクッと肩を震わせると、リヴァイさんが振り返った。
「―――――何か、用かよクソ野郎共。」
「―――――えっ、お前……リヴァイ……?!嘘だろ、なんでここに……!地上に行ったんじゃ……!」
「あぁ、帰省ってとこだな。それより―――――こいつと遊びたいなら、まず俺が遊んでやろう。」
リヴァイさんが男たちのほうに歩を進める。
なんて威圧感だろう。こんな殺気を直接浴びたら、私なら立っていられそうにない。
「―――――ひっ………いえ、大丈夫、です……!すみません……っした………。」
リヴァイさんは舌打ちをして、私の方へ向き直り、手を差し出した。