第36章 抱擁
「――――――あの日の非礼を、深くお詫び申し上げます………!お嬢様を、どうか………どうかよろしくお願い致します……!」
「……気にしていない。過去のことだ。それに―――――言われなくても、ナナは俺が守る。」
「まさか、まさかあなたがリヴァイ兵士長で……そしてお嬢様の愛する人だったなんて―――――。」
涙を堪えるように両手を口元に当てて、ハルは呟いた。
「あなたから贈られた翼のネックレスを―――――お嬢様はそれは大切になさっています。―――――愛しい人からもらったと。」
「…………翼………?」
なんだそれは、なんの話だ………?不思議に思っていると、遠くからナナの声が聞こえた。
「リヴァイさん。」
声のする方に目を向けると、ナナと同じ白銀の髪と濃紺の瞳を持った、ナナに瓜二つの少年の手を引いて、ナナが戻って来た。
「紹介……します、弟の、ロイです。」
「………ロイです。あ、姉が………いつも……お世話に………。」
弟は目を伏せたまま、震えるような声で呟いた。
なぜそんなに怯える?
俺はこういうハッキリしない奴が勘に障る。
「――――――おいナナ、とんだ腰抜けじゃねぇかお前の弟は。大丈夫なのかこんな状態で。」
「ちょ、リヴァイさ……!」
「!!!!」