第36章 抱擁
「よぉ。久しぶりだな。」
「――――――っ………。は、い………。」
「帰るぞ。準備できてんのか。」
「あ、今、途中で……こんなに早いなんて、思わなくて………。今朝、解除されたところなのに……早すぎませんか、来るの……。」
「あ?嫌なのかよ。」
「いや別に嫌じゃ………。」
「――――――待てなかった。」
リヴァイさんはフイッとそっぽをむいて、小さく呟いた。
彼が拗ねる時の仕草だ。
その姿が堪らなく愛しくて、この腕に今すぐ抱きしめたくて、私はベランダの柵を乗り越えた。
「―――――おい何する気だ。」
「今すぐそこに行きます。」
「―――――馬鹿か。中から回って来い。怪我するだろうが。」
「私だって、待てないんです。」
リヴァイさんは少し目を見開いた。
「今すぐ抱きしめて貰うのに、一番早いので――――――受け止めてくださいね?」
「――――――おいっ………。」
私がワンピースのスカートをなびかせてふわりと飛び降りると、リヴァイさんは呆れた顔で両腕を広げてくれた。
その胸の中に収まって―――――――
綺麗に抱きとめてもらえるはずもない。
時計塔の時とは違って、私が随分大きくなっているのだから。
受け止めて貰えたはいいが、その衝撃で二人そろって地面に倒れ込んだ。