第36章 抱擁
通行規制が解除される日の朝、私は改めて家族に調査兵団に戻ることを告げた。
父の秘書業務は新しく雇った人物に引継ぎ、父はただ静かに私にありがとう、いつでも帰っておいで、と言ってくれた。
ロイは少し寂し気な顔を見せたものの、あの日話した通り穏やかな表情で理解を示してくれた。ハルはもちろん、今までどおり私の夢を理解し、応援してくれている。
―――――前にこの家を出た時は、ハル以外誰の理解も得られなかった。
でも、今は違う。
家族がいて、私の決断を認めてくれている。その事実は、私を一層勇気づけてくれる。
しばらくとることもないであろう家族揃っての朝食を終えて、私は2階の自室に戻り、念のため帰るための準備をしていると、突然強い風が吹きこんだ。
私が羽ばたくことを後押しするようなその風の向こうに、見覚えのある艶やかな黒鹿毛の馬を見つけた。
あれは―――――――
「―――――リヴァイさん……!!!」
思わずベランダから身を乗り出していた。
門のところに、待ち望んだその姿がある。
リヴァイさんはなにやら守衛に話をして、こちらを指さした。守衛も大きく手を振る私を見ると、リヴァイさんの通行を許可したようだった。
門から、リヴァイさんが私の方へ近づいてくる。
「…………っ………。」
なんと声をかけていいのか分からずベランダからその姿を見つめていると、私の部屋の下までリヴァイさんがやって来て、私を見上げた。