第36章 抱擁
「なぁ、あいつらは一体何なんだろうな?」
「それがわかりゃ、苦労しないよ――――――!!!」
「で、どうする。次の壁外調査でも同じように奇行種を狩るのか。―――――まぁ、この疫病が収まらねぇ限り次は随分先になりそうだがな。」
「―――――そうだな。話を聞く限り、そのジャックが曲者だった線が強そうだ。他の奇行種でも同じことが起こるのか―――――試してみる価値はあるんじゃないか。」
「そうだね。もし奇行種が全て、死に直面したとき時に知性を発揮する――――――今回のように……まるで違う生き物のような様子を見せるなら、通常種と奇行種の大きな違いが一つ証明できる。」
ハンジの言葉に、エルヴィンの目がほんの少し見開く。
「おい、なんだエルヴィン。」
「ん?」
「………今、何か考えただろう。言えよ。」
「―――――違う生き物になったのではなく、違う生き物が、操作しているとしたら。」
「―――――――………。」
「操作……?そんな、まさか………。」
「―――――もし巨人を操作する術があるのなら、その先にいるのはなんだ?」
エルヴィンの急な問に、俺もハンジも硬直した。
「神か?悪魔か?それとも――――――」
「――――――やめろ。」
俺はエルヴィンの言葉を制した。確証もなくその言葉を口にすることが、何か良くないものを引き寄せて来そうだと、そう感じた。
エルヴィンは少し目を細め、ハンジは恐怖を抱いたような目でエルヴィンを見た。