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【進撃の巨人】片翼のきみと

第36章 抱擁




私とロイは引き続き疫病の状況から施策を練り、感染者が増え始めた地域への医師の派遣や、医療物資の増産手配・各地への支給、隔離病棟の設置などにあたりながら、特効薬の開発のためにあらゆるツテを使って研究者の精鋭を集め、チームを作った。

すぐに特効薬を作れるはずはないけれど、この疫病が存在している今なら、王政が新薬の開発に投資を惜しまないはず―――――――この先、収まりつつも長くこの疫病と人類は戦っていかなくてはならない事を見据えて研究を開始することを、ロイが提案した。



これまでの医学歴史では、ここまでの大規模な疫病の蔓延と対策を行った過去は見当たらなかった。

自然に発生した流行り病は、小さな地区でひっそりと起こり、ひっそりと終息していく。

私の知る医師たちももちろん感染性の病について多少の知識はあれど、誰もが自然のことと受け入れ、危機感を抱かなかった。



けれどロイは、国の3分の1の領土を失い、狭い土地に多くの人間が閉じ込められたこの現状と、この奪還作戦による壁外の絶望的な衛生環境の掛け合わせで、ただの流行り病が疫病となり猛威を振るうかもしれないと予測した。



その予想は見事に的中し、彼の働きとダミアンさん主導による王政の対処で、この難局はなんとか乗り越えられそうだ。



まったく、私の弟はすごい。

もともと人を意のままに動かす事だけに長けているのではない。

観察力、洞察力、想像力、危機管理能力、実行力……全てにおいて尊敬するとしか言えないほど、研ぎ澄まされた感覚を持っている。

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