第35章 疫病
ダミアンさんへの提案が通ったことに興奮して話をしながら馬車に揺られる。
「ロイがあまりに直球で、我儘で―――――驚いたよ。……でも、私は今のロイが好き。」
ふふっと笑って言うと、ロイが頬杖をついて私を見る。
「国の権力の中央にいる人物に、臆することなく僕ちゃんと話したよね?」
「うん。」
「じゃ、取り消してよ。」
「何を?」
「……“腰抜け野郎”ってやつ。」
私は一瞬なんのことかわからず、ポカンとしてしまった。
その様子を見てロイは少し不満を呈す。
「一体どこでそんな口の利き方習ってきたのさ。ほんと、調査兵団ってろくでもないね。」
「………うるさいな、腰抜け野郎。」
「また言った!!!」
ロイがムッとする顔が新鮮で面白くて、私が笑うと、ロイも笑った。
「――――――そんな顔で笑うようになったのも、調査兵団のおかげなの?」
「うん。ねぇ、いつか紹介したい。ロイのこと、みんなに。私の自慢の弟だって。」
「―――――嫌だよ、姉さんの恋人に殺されちゃうじゃん。……じ、自業自得なんだけどさ……。」
私にした仕打ちを、本当に心から後悔しているのだろう。この話題になると、途端にロイは目を伏せて小さくなる。
「――――――確かにそれは殺されるかもしれない。冗談抜きで。そういう人なの。」
「えっとんでもない奴じゃん。」
「いやあんたもとんでもないことしたんだから、お互いさまでしょ。」
「う………。」
「―――――ロイの、どう愛していいのかわからなくて不器用なところが、なんだか私の大好きな人に似てる。」
しばらくぶりに、少し穏やかで晴れやかな気持ちで、リヴァイさんを想う。