第35章 疫病
やがてロイの目がとろんと蕩けてきた。
しばらくまともに眠らずに対策を詰めてきたのだから当然だ。ロイの髪をふわふわと撫でて、眠るよう促す。
「ロイ?眠っていいよ。」
「ん………大丈夫………。」
「私も………眠い……。」
屋敷についた馬車の扉を開け、御者はふっと笑顔をこぼして屋敷の中にかけていった。
御者に連れて来られたハルは、そっと馬車の中を覗き込んだ。
そこには、ロイの肩にナナが頭を預け、そこに被せるようにロイが頭を預け、寄りかかりあった状態で寝息を立てる2人の姿があった。
ハルは、この世で一番美しく愛おしいものを見るような優しい目で笑った。
「――――――おかえりなさい。お疲れさま。」