第35章 疫病
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「――――――ねぇ、ハル………。」
「はい?」
「お願いがあるんだけど………。」
庭の木からローリエの葉っぱを摘みとりながら、僕は言った。
ハルは少しだけ心配したような表情をしながらも、目を見つめて聞いてくれた。
「―――――――――。」
「それを、私がお嬢様に………?」
「―――――うん。提案、してみて欲しい………。」
「なぜ、自分でなさらないのですか?」
ハルの言葉に、思わず目を伏せる。
「きっと、姉さんは僕の言うことを信じないよ。」
「…………。」
「あんな、酷いことをしたんだから………。どうせ、また何か企んでるって、そう思うに決まってる。――――――自業自得なのはわかってるけど、ちょっとそれは……辛いから………。」
僕は手元でローリエの葉っぱを遊ばせながら、視線を上げることができないまま呟いた。
これは本心だ。
信じてもらえないのは、僕が悪い。
それは分かっているんだ。
でも、今また姉さんに疑われ、拒絶されるのは怖い。
「―――――もし信じてもらえなかったら、信じてもらえるまで何度だって伝えるんです。」
「―――――――………。」
「上辺の言葉だけじゃなく、本心を、胸の内を伝えればいい。あなたたち姉弟にもう駆け引きなんて必要ないじゃないですか。」
「…………信じて、もらえるまで……。」
「はい。私も、側にいますから。自分で伝えましょう?」
ハルは僕の手を優しく握った。ハルの手の温かさは、不思議と自分が少し強くなれる気がする。
「―――――うん。」