第34章 奇行
兵長の後ろ姿を見送りつつ俺が意気消沈していると、その肩を乱暴に組まれた。サッシュさんだ。
「おいオルオ!どうした?急にいなくなるから、心配したじゃねぇか。」
「―――――失恋しました。」
俺の言葉に、サッシュさんは俺の目線を辿り、兵長の背中を認知して、ゆっくりと俺の方に向き直した。
「えっ…………まさかお前………っ、兵長のこと………っ………?」
「いや馬鹿かよ。」
思わず敬語も忘れて突っ込んでしまった。その分サッシュさんにヘッドロックを食らわされた。
ことのいきさつを話すと、サッシュさんは笑って言った。
「―――――なるほどな、ま、お前じゃ無理だろうな!」
「いやサッシュさんも無理だったんでしょ。有名ですよ。ナナさんに告白したら豪快にフラれるどころか惚気られたって。」
「…………うるせえな、傷を抉るんじゃねぇよ新兵のくせに。お前は今日からクソ天パって呼んでやるからな。」
サッシュさんはまた俺の頭をヘッドロックしながら、俺の繊細な巻き毛をぐしゃぐしゃと乱す。
「――――――彼女が誰かのものだとしたら、男としても、兵士としてもどうやっても敵わない人のものなら、いいのにって思うんです。」
「――――――それならリヴァイ兵長で良かったじゃねぇか。」
「………いや、確かに強いらしいですけど男としてはどうなんですか。乱暴だし怖いし……。」
「………わかってねぇなぁ。」
サッシュさんはふっと笑って言った。
「―――――あの人はすげぇよ、悔しいけどな。ナナが惚れるだけある。」
「…………。」
「ま、そのうちわかるだろ。この作戦でしっかり見とけよ。あの人のこと。」