第34章 奇行
「あの、いや……すごく大事そうに、触れるから………。もしかして、好きな人からの……贈り物とか………。」
「―――――あぁ………そうだな。」
決定的だ―――――――
このシーンを、俺は以前にも見た事がある。
ナナさんの誕生日。
ナナさんは兵長の描いた絵を胸に抱いて、まるで本人を抱きしめているかのように幸せな笑みを浮かべていた。
同じだ。
兵長もまた、ナナさんを想っている。
こんな新兵の俺に見破られてしまうくらいに、抑えきれない想いで。
いいな、なんか、そういうの……。
「―――――俺は戻るが、……あぁオルオ――――――。」
「は、はい。」
兵長は俺の方に歩みより、すれ違いざまに俺の肩に掌を置いてほんの少し力を込めた。
「―――――ナナは、俺のだ。」
その三白眼で俺をじろりと睨みあげる。
「………っ………!」
「想像で抜くぐらいなら許してやる。が、変な気起こしたら――――――――削ぐ。」
全身に鑢をかけられたようにその身がよだつ。
―――――人類最強の男の牽制は効果がありすぎる。
俺の本気の恋はいとも簡単に砕け散った。