第34章 奇行
口々に色んな話が飛び交う中、リヴァイ兵長だけが腕を組んで黙ったままだ。
時折、月を見上げて遠くを眺めてはなんとも形容しがたい表情をする。
ふと、リヴァイ兵長は立ち上がってどこかへ一人消えて行った。俺はどうにも気になって、少し間を置いてからその後ろをついて行った。
―――――ばれないように、そっと。
「おい、なにか用か。」
「――――――いえっ………。」
即行でバレていた。
風が吹き抜ける小高い丘の上で、なにやら一点を見つめていたはずの兵長がこちらを振り返って言う。いつもの鋭い目が俺を睨むと、反射的に背筋が伸びる。
「―――――この先に、何かあるんですか?」
「………いや………。」
この人の事は知りたいと思っていた。
圧倒的戦闘力はどこから来るのか。
そして―――――――ナナさんをどう思っているのか。その二人の関係性を知りたかった。知りたい気持ちを鼓舞して意を決して話しかけてみても、返ってくるのは一言のみ。
最高に気まずい。
しばらく幾つかの夜風が通り過ぎ、兵長は風になびくクラバットに触れた。
いつもの兵長からは想像も出来ない優しい触れ方と切なげな横顔に釘付けになっている自分がいた。
顔がいいと、なんでも絵になってしまうからずるい。
「―――――それ、大事なんですか。」
「あ?」