第33章 宥和
「ねぇ父さん、僕はいい子だったでしょ?全て父さんの望みを叶えたじゃないか。父さんが蔑んでいた姉さんは僕が心身共に壊しておいてあげたし、父さんが許せなかった母さんは奪還作戦で今頃巨人の餌だ。そしてこの病院を大きくしろと父さんが言うから――――――僕に群がる汚い大人を使って、ここまで上り詰めた。今この国の医療は一手にオーウェンズのものだ。ねえ、望み通りの僕が出来上がって―――――――満足?」
ここは軽やかで爽やかな笑顔で言うところなんだけどな。
おかしい、うまく顔が作れない。
目が、笑えない。
僕は今どんな顔をしている?もしかして、すごく怖い顔をしているかもしれない。
「赦してくれ、ロイ―――――――………。」
父さんが僕を強く抱きしめた。
―――――あぁ、痩せたな。死ぬのかな、もうすぐ。
「お前をこの病院の生贄のようにしたかったわけでは、ないんだ――――――、ただ、愛して……いたんだ……お前も、クロエも、ナナも―――――――ただ、愛していた……のに……!愛し方を、接し方を―――――――私は、知らなすぎた………。」
「――――――――今更、なんだよ。」
ぼそりと呟いたその声は、大人ウケするようないつもの高めで甘い、少年の僕の声ではなかった。
「すまない、ロイ………!すまない………、もう、演じなくていい。ありのままのお前が、私たち家族にとって大切な存在だ………。」
父さんの項から、懐かしい匂いがする。
そうだ、僕はこのオーデコロンが好きだった。