第33章 宥和
「………今日出立する班だと言っていました。」
「そんな………クロエ……………!」
母をまだ、愛しているのか――――――心のどこかで、哀れみと愛しさを感じた。
父もまた、不器用すぎたのかもしれない。
当時、小さな私から見た父は誰からも尊敬され傅かれる存在で、全てが正しい存在だと思っていた。
でも、今ならわかる。父も母も人の親である前に人間だ。不完全で、不器用で、間違うことだってあって当然なのだと。
「大丈夫ですお父様、私の覚えている限り、お母様の班には――――――調査兵団指折りの、頼りになる方がついているから。きっと、きっと大丈夫です。」
神に祈るように震えながら頭を抱えて蹲る父の背中を、そっと撫でた。
本当のロイを取り戻すためには、おそらくロイだけを変えようとしてもダメだ。私たち家族で、変わらないと。
「私たちは歩き出さなくては。家族の絆を失ってしまった、あの十一年前から――――――――。」
そうだ。
自暴自棄になっている場合じゃない。
まだ私たちにはできることがある。
諦めない、絶対に。
私はロイの血の跡が残るクラバットを胸にギュッと抱いた。