第33章 宥和
「―――――ライオネル公とも、密にやりとりをしているようだが………。」
「はい、少し前に………ライオネル公爵家にも軟禁されました。それもロイの策略だったようです。」
「―――――なんてことだ………。私には一切そんな素振りを見せていなかった――――――いや、私が、見ようとしなかっただけなのか………。」
傷だらけで血まみれでも助けてと言えないロイは、仮面のように綺麗な外面を作り続け、誰と心を通わせることもなく、壊れていってしまった。
そしてそれが仮面だということに私たちは気付かず、いや、気付こうともしないまま彼を絶望にまで追い込んだ。
「―――――ロイは、お母様を誤解している――――――おそらく全ての発端は、そこからです。お母様を憎み、母替わりだったハルの愛情をも疑い、姉である私を心身共に支配したい………まるで、自分をとりまく“女性”全てが許せない、そんな風に見えます………。お母様が壁外から戻られたら、話し合う場を設けましょう。」
「―――――待て、何の話だ。壁外……?!クロエが、奪還作戦に出ているのか………?!」
父はあからさまに取り乱した。
ロイが、秘密裏に行ったことだったのか―――――そして父は母を行かせたくなかったのだと、その表情や声色全てで感じ取れた。