第33章 宥和
浅い眠りから覚めると、まだそこに父がいた。
目を覚ました私に気付いて、声をかける。
「―――――身体は、大丈夫か?」
「―――――………今のところは……。ただ――――――――――……。」
ロイは何度も私の中に欲望を吐き出した。
私の絶望するような表情に、父は察したようだった。
「………薬を用意しよう。」
「……………。」
「―――――ナナが帰って来てから、ハルが良くなったと聞いた。―――――礼を言うよ。一体どんな治療を?」
「………あれは、ロイの―――――――。」
ことのいきさつを父に話した。
父は青い顔で呆然としていた。だが、完全に青天の霹靂だという様子ではなく、どこか自責の念を抱いているようだった。恐らくわずかに気付いていたんだ。
ロイの狂気に。
「――――――ナナ。お前が正しかった。私は父としてロイの心の内を聞いたことなどなかった………ただただ私の理想の形にロイを無理矢理はめ込んで――――――ロイが、歪んで傷だらけになっていたことも省みず――――――。」
初めて見る父の憔悴しきって涙を浮かべるその表情に、胸が軋んだ。
「―――――おかしいと思ったのは、ロイが交渉にいく先々で、他の病院の買収を取り付けてくることからだった。それも相場より巨額を投じているわけでもなく、歴史ある数々の病院がロイの手に落ちていくのはなぜか、私は――――――知るのが怖かったのかもしれない。」
「―――――貴族の方々の、夜のお相手をしている、と言っていました………おそらく……それも一つの理由かと………。」