第33章 宥和
私の心は、ボロボロだった。
弟を救うつもりで来たのに、まさか弟の慰み者になるなんて――――――私が想像していた以上に、ロイの心の闇は深すぎた。
それも私の罪だ。
もう、どうでもいい。
この世界がロイによって壊されてしまっても、私には関係ない。
だから帰して。リヴァイさんのところに。
エルヴィン団長、ハンジさん、リンファ、サッシュさん――――――帰りたい。みんなのところへ。
やがて視界が揺らぐ。
なんだろう、力が入らない。
あぁそうか、さっき喉奥に流し込まれた薬。即効性はないけれど私を内側から侵していく何かだ。こうやって、ハルはこの恐怖にどれだけ長い間耐えてきたのだろう――――――。
とめどなく涙を溢れさせていると、ガチャ、ガチャと鍵の開く音がした。力なく涙したままベッドに横たわり、入って来た人物の方に目をやった。
「――――ナナ?………どういうことだ、これは―――――………。」
「―――――………。」
扉を開けたのは、父だった。
息が苦しい。
あぁ、きっとまた私は責められる。
ロイを誘惑したのはお前だ、あの女の娘だからだ、そんなところか。
父はつかつかと歩を進め、私が座り込むベッドの側まで来て私を見下ろした。
「――――おい―――――………。」
「……………。」
言葉に詰まる父に対して何も言えず、顔を背けることしかできなかった。
次に刺される言葉の刃を怖がっているのか、私の体は震えていた。