第33章 宥和
物資を荷台に乗せて、固定する。
その作業の合間に、ハンジに向かってナナの母親のことを話した。
「――――――さっき、ナナの母親に会った。」
「えええっ?!ど、どこで?どういうこと?」
ことのいきさつを説明すると、ハンジはうーんと難しい顔をした。
「なるほど……確かに医師の派遣はオーウェンズがしているんだよね?全権はナナの弟が持ってるって言ってた………実の母親を壁外に出すとはまた………。少しは忖度しそうなもんだけどね。驚くほどの公平性をもって選んだのか、はたまた………。」
「―――――話の流れとエルヴィンやナナの言葉から想像するに、そんなマトモな奴じゃねぇと思う。………どうせロクな理由じゃねえ。―――――まぁただ、母親の様子を見る限り本人の意志で来たようにも見られたがな。」
「―――――ねぇ、なんか嫌な感じだね。ナナ、帰ってないんでしょ?」
「―――――あぁ。」
「狂気を秘めた子供に頭脳がついてくると怖いからなぁ………。ナナに何事もないと、いいけど―――――。」
ハンジが心配そうに空を仰ぎ、つられるように俺も空を仰いでその先の王都のナナを思う。
無事でいろ。
必ず俺が連れ戻してやる。
お前の居場所は、調査兵団だ。