第33章 宥和
ナナが死ぬかもしれないと思った途端、兵士長としての役目をいとも簡単に放棄した。
もし、あいつらが精鋭ぞろいの班でなければ。
もし、ハンジがついていなければ。
俺が合流した時にはもう、あの日のようにこいつらが屍になって転がっていたのかもしれない。
――――――なぁエルヴィン。
誰かを守りながらこの調査兵団で数多くの兵の命を背負うのは、こんなにも難しいのか。お前が特定の女を作らない理由が少しだけ分かった気がする。
そのお前がナナを欲しいというなら、その想いは本物か?俺を操るためではなく、ただ一人の男としてお前が心底ナナを欲しているなら―――――――――
「――――――いるなら、どうするってんだよ……………。」
口をついて出たその言葉を、唇をかみしめて押し殺した。
俺より、エルヴィンの方がうまくやれるだろう。
ナナも兵団もそつなく守ってみせる奴だ、あいつは。
「………ん?何か言った?」
「………いや、なんでもねぇ。………勝手な行動をして悪かったな。」
「ほんとだよ!私たちがそんな行動したら、あなためちゃくちゃ怒るくせにさ!!」
「………そうだな。……悪い。」
目線を落として謝罪の言葉を口にすると、サッシュとリンファがこそこそと何かを呟いた。
「………リヴァイ兵長が、謝ってんぞ………雪、降るんじゃね……?」
「謝罪の言葉と敬語は知らない人だと思ってた……!」
「………おい、聞こえてんぞガキども。」
いつも通りの目線でサッシュとリンファを見ると、その背中をビクッと正して目を逸らした。
「ま、のっぴきならない事情があったんだろ?次からは控えてくれればそれでいいさ。さて、集落ももうすぐだし、物資を積んで設営に移るよ!」