第32章 佞悪 ※
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「―――――――癖になりそうだよ。」
「…………っ…………。」
姉さんを押さえつけて犯す。
意地でも嬌声を上げないつもりで口をかたくなにつむぐその懸命さがまた酷く僕を興奮させることを、姉さんはわかっていない。
「僕、いつもは抱かれる専門なんだけど。………欲にまみれた、貴族のババァ達にさ?―――――あぁ、時には物好きなジジィも含まれるかな。」
「や、だ………っ…ぁ……!」
「たまんないよ。この身体と―――――その絶望の表情。あは…っ……、腰が、っ…勝手に動いちゃう………っ……。」
姉さんの中は熱く絡みついて、僕の事を歓迎しているみたいに奥へ奥へと僕を誘う。
他の男を知っている身体なのだということが、僕をイラつかせる。
けれど、綺麗なものと繋がるのは気分がいい。
貴族の豚共が僕を欲しがる理由が少しわかった。自分より綺麗な物を自分の欲望で引きずり堕とすようなこの行為が、たまらなく快感なんだ。
「―――――おねが………っ、ロイ……やめて………!」
「どう?罪深いセックスは……?愛する男とのそれと、違う?……背徳感がある行為の方が快感が増しやすいっていうけど……っ、どう、なのかなぁ……っ……はっ……ぁ、いい……っ……」
「………っ……いや………っ………。」
「僕は――――――最高にキモチイイよ………っ………。」
ゾクゾクした。
まるで鏡を見ているみたいだ。
僕の下に、なにも抗えない、無力でされるがままの人形のような僕がいる。
こんなもの、壊してやりたい。
嬲って、貶めて、嵌めて、突き壊して―――――――あぁそうか――――――――僕が壊したいのは、自分自身なのかな。だからこんなに、姉さんに執着しているのか。
自分の、半身に。