第31章 罪
いつしかエミリーが「花屋を継いで、たくさんの人に花を届けたい」とまばゆいばかりの笑顔で語った。
その日の夜中に、ノートに“僕は何がしたい?”と書きなぐってその答えを自分の中に探してみたけれど――――――何一つ書くことができず、いまだにノートは白紙のまま。
僕が生きる意味がない世界なら、その世界ごと壊れてしまえばいい。
極論だってことはわかっている。
だけど、一度考え始めると次から次へとこの世界を壊すにはどうすればいいのか、誰をどう動かし、次の一手はどうするべきか、どんどん想像が膨らんでいく。
勉強のために父に禁じられたゲームは、もしかしたらこんなものだったのかもしれない。一つ一つ妄想を実現に近づけるために一手を投じる。
僕はこのゲームに夢中になった。
実現の為に重要な役割を果たす駒が、姉さんだ。
どうやって姉さんを手に入れ、どうやって使うか。小さな駒を敵地に潜り込ませて情報を得ながら、作戦を練ることが楽しかった。
姉さんを使って、姉さんの大切にしている夢もこの世界も壊してやれば、姉さんは僕を憎むだろうか。
憎むってことは、姉さんの心を僕が占めるってことだ。
姉さんにとって僕が、憎むべき対象として深く認識されるってことだ。
―――――――こんなに、幸せなことはない。