第31章 罪
「私は無意識に諦めていたんです。ロイ様を救うことを。」
「私も―――――――同じ。ロイはお父様に愛されているのだから、プレッシャーなんて期待されているからこそなのだし、良いじゃない。私には無いものを手にしているんだから、私よりも幸せでしょ?って………そんな風に、勝手に………思い込んで………、ロイとちゃんと向き合ったことなんて、なかった――――――。」
私の小さな懺悔は一筋の涙として流れ落ち、シーツに滲んだ。
お父様に期待され、愛されるロイのことを無意識に考えないようにしていた、これは心の奥底にあったロイへの嫉妬と羨望だ。表面上は“ロイはお父様に愛されて良かった”と良い姉を装って振る舞い、ロイの本心と向き合うことすらしなかった。
ダミアンさんに言われるまで、気付かなかったのだ。
なんて幼稚で、愚かで、卑しい――――――自分の本性が恐ろしくなる。
「クロエ様とナナお嬢様がいなくなったこの屋敷で、私は正しく自分を律することができなかったのです。ロイ様の表情が日に日に暗く、歪んでいくことに気付いていたのに―――――――私は、気付いていないふりをした。何度も何度も、抱きしめてあげられる機会はあったのに。」
「―――――――だから、償っているの?」
「…………。」
「ねぇハル…………。」
「私にはこんな償い方しかできないですが、お嬢様は違う。血を分けた弟です。どうか、どうかロイ様を救ってあげて――――――………。」