第31章 罪
「―――――クロエ様は、私に教育を受けさせてくださいました。まるで、本当の娘のように―――――。そしてそのクロエ様に、赤ちゃんが生まれた。クロエ様と同じ銀髪が美しい、天使のような子。クロエ様は笑って、躊躇することなく私にその子を抱かせてくれた。『ナナというの。ハルは、ナナのお姉ちゃんね。』そう言って。まるで妹が戻ってきたようで、私は赦された気がした。この子を、ナナお嬢様を守り育てる事が、私の生きる意味なのだと――――――。」
ハルの生い立ちを、過去を私は初めて知った。
私はなんて愛を注がれていたのだろう。
ハルの愛が、ただの世話係としてのものではないと感じていたが、私に愛する妹を重ねていたのか。
私はただハルの手を握り、静かに話を聞いていた。
「一つ目の罪は、私が妹から目を離したこと―――――――そしてもう一つの罪は、妹の面影をお嬢様に重ねるという私情により、ナナお嬢様とロイ様に等しい愛情で接することが出来ていなかったことです。」
「―――――そんなこと、ない。ハルはいつだって私たちに平等に優しかったわ。」
ハルは小さく首を振った。
「ナナお嬢様とクロエ様を引き合わせたあの日、本当はロイ様も連れて行くべきだった。」
「あれは―――――もうあの頃から、ロイはお父様の仕事につきっきりで――――――、しかもシーナの外になんて、どのみちお父様が許すはずがなかったじゃない………。」
「はい……確かにその通りです……。ですが、どうにかしようと思えばできたと、そう思いませんか?」
「――――――――。」
ハルは物憂げな表情で窓の外に目をやった。