第31章 罪
「なんで、彼らだって生活が苦しい人たちもいたでしょう……?!アンなんて、子供を三人も養っているのよ……!仕事を奪ってしまったら、彼女たちは………!」
「――――――関係ない。」
ロイの冷たい言葉に愕然とする。
ハルほどの関わりではないにしろ、もう何年もこのオーウェンズ家のことを任せてきた人たちを、こんなに急にこんなにあっさりと切り捨てるなんて。
「解雇の理由はなに?正当なものじゃなければ、認めないわ……!」
「姉さんをここに繋ぎ止めるため。」
「―――――――。」
想像の遥か上を行く理由だった。
そんな、そんなことで。
何人もの使用人の生活を、人生すら狂わせてしまうかもしれない決断を…………。
ダミアンさんが言った言葉を思い出す。怖い、ロイはもはや私の知っている弟じゃないみたいだ。
「病床に伏したハルを、一人で置いて帰れないでしょう?姉さんなら。」
「――――――どこまで……っ、どこまで人を傷付けたら気が済むの………っ!エミリーのことだって………っ!」
「――――――あぁ、やっぱりバレてたんだ。………ほんっとに、グズだな。まぁ、使えるとも思っていなかったけど。」
私は我慢ならず、気が付けばロイの頬を思いきり打っていた。
動揺を示さないロイの、瞳がわずかに揺らぐ。
乱れてもなお美しいその髪をかき上げて、幼い狂気を宿した笑みを零した。
「――――――いいね、初めての姉弟喧嘩だ。」
「―――――あんたの性根は、私が叩き直してあげる………っ………!」