第4章 再会 ※
“おお、あれがオーウェンズ病院の令嬢か。想像以上の美しさだな”
“あら嫌だ……男と逃げた、元奥方にそっくりじゃないの……血は争えないわね。”
“お近づきになりたい…!”
“最年少で医学大学を卒業した才女らしいぞ。お前なんか、相手にされないだろ”
好き勝手言っていればいい。私は私のやるべき目的があって、ここに来ているんだから。
辺りを見回していると、馴れ馴れしく声をかけてきた男がいた。年の頃は三十になる前くらいだろうか。だらしなく贅肉のついた体に、高価そうなスーツを纏っている。
「ねぇ、君、ナナだろ。」
「………ええ。失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「俺を知らないの?……へぇ、オーウェンズのお嬢様は世間知らずだって本当だったんだね。……まぁいいや。俺はジョナサン・クロッカス。クロッカス伯爵の息子さ。」
「……それは失礼いたしました。それで、クロッカス伯爵のご子息が私に何の用でしょうか?」
凍てついた微笑みを向けても、皮肉った名で呼んでみても、男には通用しないようだった。
「用はないけどね……一人で寂しいかなって。ほら、僕優しいからさ。……あれでしょ、母親が売女だったんだよね。皆噂してる。でも僕は気にしないよ。」
そう言って私にワイングラスを差し出した。
ぶん殴ってやろうかと思ったのは、人生で二度目だ。
「…………。」
呆れて言葉も出てこない。
そんな私を見て、何を勘違いしたのか、男は更に調子に乗った。
「可哀想に、わかっているよ。ねぇ、ちょっと抜けようか。僕が慰めてあげるからさ。」
男の腕が私の腰に添えられ、嫌悪で吐き気がしそうだ。顔が青ざめていくのがわかる。
その時だった。