第30章 公爵
食事を終え、使用人たちが後片付けをした後他愛もない話を少しだけして、ダミアンさんは立ち上がった。
「―――――さて、では僕はもう行くとしよう。ナナさんはお風呂にもゆっくり入って、ゆっくり眠ってください。」
「―――――はい………ありがとう、ございます………。」
扉のところまで見送ろうと後をついて行くと、ダミアンさんが振り返る。そのグリーンの瞳には少しの色情が滲んでいるが、理性的に抑えている、そんな目だ。
「―――――本当はもっとあなたの色んな顔を………乱れるところも見たかったのですが、今夜は我慢します。」
「…………。」
ふいにぎゅっと強くその身体を抱きしめられる。
「人の気持ちを手に入れるために、手段は色々あるとは思えど―――――――、できれば僕だって、あなたに愛されたいんですよ。僕が本気であることが、これで少しでも伝わればいいのですが。」
「…………。」
「あぁそれと―――――――――。」
ダミアンさんは低く小さな声で耳元で囁いた。
「ロイ君にはむしろ、今夜僕に貞操を奪われたと思わせておいた方がいい。そんな風に振る舞いなさい。おそらく僕の行動は彼にとって予想外だ。体を重ねていないことを知られたら、次の手段を講じて来る。―――――僕はこれでも、あなたを守りたいと思っているんだ。」
そういって頬にキスを落として、私の身体を解放した。
「―――――おやすみ。」
――――――彼は大人で、理性的だ。
悔しい。何一つ敵わなかった。