第30章 公爵
「―――――その目も、素敵ですね。」
「話を逸らさないでください!」
「証拠など、どうにでもなるんですよ。」
「―――――――。」
「ライオネル家にあなたが来てくれるのなら、オーウェンズ家は僕が守りましょう。」
結局はそうなるのか。
私はこの王都にいる限り、お人形でしかないということだ。
人間としての私を、医者としての私を、ただのナナとしての私を必要としてくれる人達のところへ、今すぐ飛んで帰れたら。そう、思った。
「―――――――守って頂かなくて結構です。私もオーウェンズ家など潰れれば良いと、そう思っていますので。」
「なんですって………?」
私の言葉に、ダミアンさんは驚いたように目を見開いた。
きっと、家がなによりも大切なこの貴族の人たちにとって、家よりも大切なものなどないのだろう。父がそうだった。なんて虚しい、なんて悲しいのだろう。家とは人だ。愛する人のいない荒んだ家など、ただの箱でしかないじゃないか。
「私がライオネル家に嫁がなければ、オーウェンズ家がつぶれるというのなら、好都合です。お話が以上なら、大切な人の看病をしたいのでこれで失礼します。」