第30章 公爵
「―――――――!!」
「本当に?」
ダミアンさんの目は私を捕らえて離さない。
ロイの行き過ぎた私への執着と、ハルの異常な衰弱。嫌な要素がパズルのピースのように少しずつ組みあがっていく。
「弟を、怖いと思ったことがないですか。――――――彼は、危険だ。」
「――――――――。」
「さて、これ以上ここで、ロイ君の城で話すわけにはいかない。続きは僕の城で。―――――いいですね?」
ダミアンさんは立ち上がり、当たり前のように私の手を取った。私は胸中に渦巻く不安と疑念を掻き消す事もできないまま思考さえも支配され、連れられるがままにダミアンさんの馬車に乗った。
王都を抜け小一時間ほど馬車が走ったところで、森の中にたたずむ大きな屋敷へと到着した。
この国での権力を誇示するような立派な建物は、どこか不気味なものに見える。建物の中に通されると、豪華絢爛な内装と数々の調度品が目に入る。
食料危機に瀕し、飢えている子供たちがいる中でこの格差はどうだ。
私は嫌悪感を抱いた。
更に進むと豪華な応接室に通され、最高級の紅茶が振る舞われる。
「――――――話の続きですが。」
「はい…………。」
「このままだと、オーウェンズ家は近いうちに握り潰されますよ。ロイ君が疫病を生み出そうとしているという証拠と一緒にね。」
「そんな馬鹿なことが、あるわけないでしょう。事実でないものに証拠などあるわけないのですから。」
怒りを込めた眼でダミアンさんを見つめる。