第30章 公爵
「どういう………ことですか。」
「弟のロイ氏は、あの若さで驚くべき才覚ですね。」
「…………!」
「彼が表舞台に出て来るようになってから、驚くべきスピードでこの国の医療はオーウェンズ家の手のうちに一挙に集まった。すると、どうなるかおわかりですか?」
「―――――いえ…………。」
「脅威に、なるんですよ。」
「―――――――。」
背中がゾクリとする。
先ほどの温和で和やかな視線とはうって変わった鋭い眼光は、この世界を動かす権力を手中にしている人物なのだと物語る。
「現に、王政の中心ではオーウェンズ家の急成長を危険視する声が上がっています。そう、医療体制を牛耳られた状態で………この閉じられた世界で疫病が発生してしまえば、王も貴族も例外なく彼にひれ伏すしかなくなるからだ。」
「…………。」
「更に怖いのは―――――――彼が優秀なのは経営者としてだけではなく、医者…研究者としても実に優秀であるということだ。噂によると、自ら疫病を生み出す事すら、可能だと――――――――。」
「やめてください!!!」
私は大きな声を上げて、ダミアンさんを睨んだ。
「いくら公爵でも、弟を侮辱することはやめていただきたい………!彼は医者です。そんな、そんな恐ろしいことを――――――。」
「するわけがないと、本当に思っていますか?」