第29章 罠
「私の願いは、お嬢様が自由の空に羽ばたくことです。――――――そう、その翼をもってして。」
冷たい指先が、私の首元のネックレスに触れる。
「―――――素敵ですね。これは、あの愛する人から………?」
「……あ……これは――――――………。」
「…贈った方は、お嬢様の事を理解して、そして愛しているのですね。良かった。」
「―――――――うん………。」
違う、手紙で伝えていた―――――――リヴァイさんじゃないんだと言葉が出てこなかった。
ハルを安心させたい一心でついた、ささやかな嘘。
私は翼のネックレスに神頼みをするように、ハルの無事を祈った。
「――――ねぇロイ。なぜハルを入院させないの。」
病床の確認と、ロイと話すために私は敵地にも等しいオーウェンズ病院にやってきた。忙しそうに院長室で書類に目を通すロイに話しかける。
「だから、言ったじゃないか。検査しても原因もわからない。治療法も見つからないんだって。」
「そんな、そんなはずないでしょう……?!ちゃんと調べたの?カルテを見せて!!」
「――――――部外者に、見せられるはずがないじゃないか。」
ロイは冷たい目で私を制した。