第29章 罠
私は常にハルの側にいた。
寝る間も惜しんで付き添い、くまなくその病状を観察した。
だけど、その原因と思わしきものを特定できずにいた。
3日が過ぎた頃、ハルが私に尋ねた。
「お嬢様………?」
「なに?どうしたの?」
「調査兵団に、戻らなくてよろしいのですか。」
「―――――ハルをこのまま置いて、戻れない。せめて治療法を見つけて、治癒の目途が立ってからでないと。」
「私の事は―――――――。」
「良くない!!!!」
ハルの言葉を遮るようにして、叫んだ。
「良くない、絶対に失わない……!ハルは私の家族でしょう?!お願いだから、頼って……!生きたい、助けてって、言って………!!」
横たわるハルに縋りつくように泣いた。ハルは、相変わらず優しい手で私の髪を撫でた。
「―――――これは、罪を犯した罰なのです………。償うしか、ない………。」
ハルの消え入りそうな声を、私は聞き逃さなかった。
ハッと顔を上げてその真意を問うも、ハルはただ憂いを含んだ微笑みで返すだけだった。