第29章 罠
返事の途中で待ちきれずに扉を開けた。
「ハル!!!!」
私の目に飛び込んで来たハルは、ベッドに横たわり、今にも消えてしまいそうな儚さだった。
ふるふるとした艶やかな頬は痩せて、青白い顔をしている。
生気のないような目で私を見た。私は涙が込み上げた。
「お嬢様………!」
その時、ハルが枕の下に何かを隠した気がした。
「ハル、ハル……!」
ベッドに駆け寄り、ハルを見舞う。ハルは、嬉しそうな顔で私の頭を撫でてくれた。
「……よく、お戻りで……。」
「ハル、どうしたの………何があなたを蝕んでいるの……?!一刻も早く病院に………!」
「…………。」
ハルは、もの悲しそうな顔で微笑み、首を横に振った。
「私が……私が診るから………、お父様にだって話をつける!だから、ちゃんと入院して、治しましょう………!」
「……いいのです、お嬢様………。」
「―――――――ハルの病は、原因がわからないんだ。だからここにいる。」
中性的なその声に振り返ると、ロイが立っていた。
「――――――おかえり、姉さん。」
「――――――ロイ………。」