第29章 罠
「あぁ待て。私がつけたい。」
「え………。」
言うが早いか、エルヴィン団長が立ち上がって私のほうに歩み寄った。私の手からネックレスをとると、私の背後にまわる。
「髪を、上げてくれるかな?」
「………は、はい………。」
私は言う通りに長い髪を両手で束ね、その首筋が見えるように髪を掬った。なぜか、とても恥ずかしいことをしているような気がして、ひどく鼓動が早くなる。
エルヴィン団長の手が耳をかすめて首の横から差し入れられ、私の目の前で鎖の両端をつまむ。
首筋に息がかかりそうな距離で、時折背筋がゾクリと震える。
まるで鎖でつなごうとしているかのようにその首に翼ががかけられた。
「で、できましたか………?」
「いや、まだだ。」
「―――――嘘です、もう着けられて――――――――。」
振り返ろうとした時、首筋に息がかかる。
熱い唇に、食まれた感触。
「………んっ…………!」
「――――――よく、似合っている。」