第29章 罠
王都への出立の朝。私は荷物を整え、団長室へ向かった。
「準備はいいのか?」
「はい。このような忙しい時に……本当にご迷惑をおかけします。」
改めて私は頭を下げた。
「なるべく状況がわかるように、手紙を寄こしてくれ。弟君の様子からして、おそらく6日間で戻れるとは、私は思っていないからね。」
「はい………。」
「それから、医療班のことも細かく引継ぎを残してくれて助かるよ。しばらくは君がいなくても、なんとかやっていけそうだ。あの短時間によくここまで……感謝するよ。」
「いえ、当然のことです。」
エルヴィン団長は手元の書類をぱさっとと置いて続けた。
「それと。」
「はい。」
「戻って来られるおまじないは、する気はないのかな?」
「しょ、職権乱用です………!」
「ん?ただ私は確認しただけなんだが。」
「~~~~………っ………。」
意外と子供じみた意地のようなところがあるんだな、と初めて知った。エルヴィン団長はニコニコとしながらも圧力をかけてくる。
私はポケットから翼のモチーフのネックレスを取り出し、首の後ろに手を回した。