第28章 密偵
「ライオネル家に嫁ぐ話が生きているのなら、帰省はどうやっても阻止するが―――――、奪還作戦がライオネル家の援助なしでここまで進んでいる以上、その線は薄い。」
「………そうなるタイミングまで見越して、班編成の発表を延ばしに延ばしたのはお前だろうが。もっと早くから編成ごとの訓練に切り替えるはずが、お前にどれだけ振り回されたと思ってる。」
不機嫌なリヴァイからの恨み言にも、もう慣れたものだ。確かに班編成の発表を予定より数週間遅らせ、リヴァイやハンジ、ミケにも随分調整に尽力してもらうことになったが、結果良い方向に運んでいる。
「悪かったよ。だがまぁ、結果としては歓迎するものだろう?奪還作戦の間、いうなれば最も安全なところにナナを置いておけるのだから。お前にとっても、奪還作戦で目の前に大量の死体を見てナナが壊れてしまうより、よっぽど良いはずだ。」
「……ちっ……。お前の洞察力と決断力と勘は、認めたくねぇが信頼に値する。」
「おや、嬉しいね。」
「奪還作戦が終わっても向こうがナナを返さねぇつもりなら、どうする?」
「どうもしないよ。」
「……あ?」
なんとも不機嫌な声を出す。リヴァイは腕を組んで私を睨み付ける。