第28章 密偵
「お前がナナを取り戻したら、例えば、どうする?」
「………そうだな。―――――帰る場所を無くす、かな。」
「――――――あ?」
「調査兵団を潰す方法を考える。」
本人の意思を捻じ曲げて従わせたいわけではない。
だが本人が私を選ばないのなら、選ぶようにすればいい。
その他の選択肢をなくせばいい。
自分で問うておいて、リヴァイはやれやれと言った呆れた顔でため息をつく。
「――――――てめぇのその思考は異常だ。」
「そうか?実に理にかなっていると思うぞ。」
「―――――で、弟はどういう奴なんだ。」
「おそらく私に似ているよ。」
「厄介だな。」
「だが、ナナに対する執着はリヴァイ、お前のそれに似ている。―――――大変だな、ナナも。重たすぎる男にばかり好かれて。」
「笑いごとじゃねぇだろ。」
「そうだな、だがおそらくナナは行くと言う。育ててくれた世話係が、病に伏したそうだ。あの子の性格上、罠だとわかっていても行くだろうな。」
「――――――世話係………あぁ……あいつか………。」
リヴァイは目線を斜め上に向け、遠い昔のことを思い出しているように少し目を細めた。
「知っているのか?」
「一度だけ話したことがある。ナナを守ろうと、女だてらに必死だった。……そりゃあ、ナナなら罠だと分かっていても行くだろうな。」