第28章 密偵
「―――――お前も運がいいな。ナナが逃げたから何もなかったが、もしなにかあったら、俺がお前を半殺しにしてた。」
これでも抑えているのだろう、リヴァイの怒りに満ちた眼差しが向けられると、エミリーはビクッと震えた。
「――――――処罰は追って伝える。戻っていい。ナナには今日中に話をつけるように。」
「………はい。」
力なく身体を引きずるようにしてエミリーは部屋を出た。
「―――――で、どうする。本当に行かせるのか。奴は黒だった。間違いなくこの帰省は罠だ。弟が、何か企んでる。」
「そうだな………。なぁリヴァイ。もしお前が、ナナを奪われた身で、そのナナが何かの理由で自分の元に帰ってきたなら――――――どうする?」
「あ?」
「お前なら、どうする?」
「………閉じ込めて、二度と返さねぇよ。」
「そう、言うと思ったよ。今回の手紙の内容も、本人の意志でつなぎとめる口実のようなものだった。―――――おそらくこのまま行かせると、少なくとも奪還作戦が終わるまでは返さないつもりだろうな。………いや、もしかしたら二度と返さないつもりかもしれないが。」
「お前なら、どうするんだ。」
「なに?」