第28章 密偵
「――――――明日から6日間、ナナが実家に帰ることになっているんだが。」
「――――――あ?なんだそれは。聞いてねぇぞ。」
「そうだろうな、さっき決まったところだからな。」
「………ちっ………、このタイミングか。………悔しいが、お前の思惑通りじゃねぇか。」
「………あとは、向こうがどう出るか、だな。」
二人で描いていた通りの展開になったというのに、リヴァイは相変わらず不機嫌に私を睨む。
「―――――なんだ。なにか文句でも?」
「おおありだ。ナナの出立をもう少し遅らせることもできただろう。俺へのあてつけか。」
「………なんのことやら。」
「……規則なんて破って、今夜ナナを閉じ込めて滅茶苦茶に抱くか………。」
「おいおい心の声が漏れているぞ。ダメだ、わきまえろ。兵士長だろう。――――――まぁ、そうだな……長くなるからな。離れがたいのはわかるよ。」
リヴァイと他愛もない話をしていると、扉が小さくノックされた。その音だけで、相手が怯えていることがわかった。
「入って構わない。」
「――――――失礼、します。」
「あぁ、よく来てくれた――――――――――エミリー。」
いつもの朗らかで柔らかい笑顔のエミリーの顔はまるで窮鼠のように警戒色を強く示し、同時に怯えていた。