第28章 密偵
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夕方になり、おおよその執務を片付け終わったナナは、自室に戻った。さて、そろそろ報告が来る頃だ。
――――――黒か、白か。まぁ、間違いなく黒だろう。
「―――――エルヴィン団長。ナターシャです。」
「ああ、入ってくれ。」
ナターシャは私の前に立つと、報告を開始した。
「―――――やりとりの方法は手紙のみです。使者との接触などは、ありませんでした。」
「―――――手紙の内容は入手できたか?」
「………一部、ペンの走り方から読みとれました。『急に出陣が決まった。こんなはずじゃなかった、でもなんとか阻止してみせる。もう少し待っていて。』……これが一ヶ月前。そして、『ごめんなさい、うまくやれなかった。手を尽くしたけど、ごめんなさい。』……これが、二週間前です。」
「相手からの手紙は?」
「読んですぐ処分しているようです。部屋を捜索しましたが、一切出て来ませんでした。」
「なるほど。だが十分だ。出陣の編成を外部に情報として漏らしていることが分かった以上、本人に話を聞くしかないな。ナターシャ、君の仕事はここで一段落だ。最後に、このあと団長室に来るように本人に伝えてくれ。」
「承知しました。」
ナターシャが礼をして部屋を出てすぐに、リヴァイがやってきた。
「―――――報告があったのか。どうだった。」
「―――――黒だな。今本人にここに来るように言っている。お前も同席してくれ。」
「………了解だ。」