第28章 密偵
「……………。」
私は私史上もっとも怪訝な顔をしていたと思う。
「なんだ、その顔は。」
「その話は嘘ですか?」
「………なぜそう思う?」
「私の知ってるエルヴィン団長は、………永遠の愛も、迷信やおまじないも、不確実なものは信じない方です。」
エルヴィン団長が少し驚いた表情で私を見つめ、少ししてから大きく笑った。
「――――――ははははっ!」
額に手をあてて俯いたあと、とても嬉しそうな顔をした。その顔はまるで初めて何かに興味関心を抱いた少年のようだ。
「………君は本当に、面白い。」
「…………エルヴィン団長は、難しいです。」
少しふくれる私を、なおも嬉しそうな優しい表情で見つめる。
「――――――まぁ、おまじないのような不確実なものに頼りたいほどには、君に身に着けて欲しいと思っているということだ。」
「………その、言い方もズルいです………!」
「ふふ………さぁ、では急いで執務を終わらせよう。」
「はい!」