第28章 密偵
「――――――贈り物は、気に入ってくれたかな?」
ドクンと心臓が跳ねた。
その翼の意味を、あの時の言葉を、測りきれず胸の内にしまい込むように引き出しの奥にしまった、あのネックレス。
「し、失礼しました。お礼も申し上げず………!とても、素敵で………さぞかし、高価だろうと………私には、勿体なくて………。」
不自然なほど他人行儀な物言いが、動揺を表してしまう。
「もったいなくて、つけられないと?」
「いえ………!」
「それとも、リヴァイが怒るから、かな?」
エルヴィン団長はふふっと笑う。その顔は、心が笑っていないときの顔でしょう。知ってる。
「―――――そう、です。リヴァイさんを不安にさせたくないです。」
私は拳に力を込めて、なんとか心の内を伝えた。
「―――――それは残念だな。君と共に生きたいというのは、本気だよ。意味は理解してくれたのかな?」
「………本気だとは、あまり思っていません。……エルヴィン団長は、すぐ私をからかう……から………。」
エルヴィン団長のせいにしてみるが、これは私の願望だ。嘘であれば、冗談であればいいのに。
「そうか。では信じて貰えるように努力しよう。」
「………。」
「それともう一つ。」
「は、はい。」
「あの翼のモチーフは鳩の片翼だよ。」
「鳩………。」
「鳩には素晴らしい帰巣能力がある。君がここに帰って来れるように、身に着けていくといい。」