第3章 岐路
封書を奪取するチャンスは、意外と早くやってきた。
俺たちの入団から数か月後、調査兵団による壁外調査が行われることになった。
重要な封書をエルヴィンは肌身離さず持っていると確信した俺達は、壁外調査の混乱に乗じて奴を殺し、それを奪うつもりだった。
ウォール・マリアから馬で駆けていく。
初めて壁外へ出た。
あまりの広大さに、太陽のまぶしさに、目が眩む。
悪くねぇ心地だった。
そういえばエイルは、この壁外よりも更に外へ、海と呼ばれる広大な水たまりを超えて、他の文化や人に出会いに行くんだと言っていた。そんなものが本当に存在するのだろうか。
半刻ほど馬を走らせただろうか。
森の近くを通過した時、嫌な足音が聞こえた。初めて見たのは、奇行種の巨人だった。今までこいつを殺すために訓練をしてきたはずの兵士が、一瞬で屍と化す。
俺は見ていた。
奴らがどんな動きをするのか。
どうやって人間を殺すのか。
どうやって食うのか。
部隊の人間が半分になったところで、イザベルとファーランに作戦を伝える。
「俺が巨人の注意を引く。お前らは脚をやれ。機動力を奪え。いいな。」
「任せとけ!!」
「はいよ!」
俺は巨人の背後にアンカーを刺し、巨人の身体に取り付く。それを振り払おうと奴が注意を怠った隙に、イザベルとファーランが奴の足元を狙う。
成功したのだろう、奴の体制が大きく崩れたその時、俺は奴のうなじを削ぎ落とした。
その巨体から噴き出た血液らしき液体は、奴の消滅と共に蒸発していく。
気味の悪い生き物がいたもんだ。
「兄貴、さすがだぜ!!」
「思ってたより、ちょろいね。」
イザベルとファーランも駆け寄ってくる。
戦闘によりはぐれてしまった俺たちは、本隊に戻るべく馬を駆った。ふと空を見上げると、先ほどまでとはうって変わって暗雲が立ち込めていた。
それはまるで、俺たちの生末を暗示しているようだった。