第3章 岐路
あいつは本当にいかれている。
地下街のゴロツキであった俺達を捕まえて、調査兵団に入団させた。自分の事を殺してやる、と言う相手を身近に置く。
それが計算なのか馬鹿なのかはわからねぇが、俺はエルヴィンを殺すつもりだった。
俺達は地下街から出て、トロスト区近くにある兵舎へと移った。
通常は訓練兵の期間を経て入団するものらしく、俺たちは明らかに異端だった。地下街出身だということも拍車をかけ、うるせぇ輩が突っかかって来ることもあった。
イザベルは奴らに喰ってかかるが、ファーランは問題を起こすな、うまくやろうと言う。それは、その方が裏のことを運ぶのに好都合だったからだ。
「エルヴィンが持っている封書を手に入れる。」
薄汚ねぇじじぃ共の欲を満たすために、俺たちを利用しようとする奴もいた。俺は乗り気ではなかったが、ファーランの言葉がそれの実行を決意させた。
「封書を手に入れれば、俺たちは晴れて地上に出られる。王都で暮らせるようになるんだ。なぁ、王都に行きたくねぇの?」
あんな場所にいなければ、俺もこいつらも、惨めな思いをすることもなかったが、それもすべて過去のことだ。
俺にとって地上での暮らしは、そこまで憧れがあるものではなかった。
だが、俺の脳裏にあの目が浮かんだ。
エイル。
あいつがいる場所。
あいつにまた、会えるかもしれない。
ファーランの話に乗ったのは、そんなささやかな期待からだったのかもしれない。