第26章 落着
空気が張ったその時、団長室のドアが開いた。
「お話し中失礼します、急ぎ耳に入れたほうが良いことが。」
ハンジのところに入り浸っている、モブリットだ。何やら相当焦った様子だ。
「あぁ聞こう、どうした。」
「ナナさんが先ほどアウラ・セイロスの策略で3名の男に輪姦されそうになりました。なんとか寸前のところで事なきを得ましたが、その……主犯のアウラと直接話をつけると言って、ナナさんが一人で………。」
頭が一瞬真っ白になった。
言葉が出ない俺を後目に、エルヴィンが問う。
「一人で行かせたのか?」
「いえ、ゲルガーにつかせています。男3名は倉庫裏で気を失った状態で身柄を拘束しました。身柄は引き渡してよろしいですか。いずれも……恥ずかしながら、一般兵です……。」
「分かった。数名倉庫裏に向かわせよう。奴らが気が付いたら、団長室へ連れて来てくれ。私はナナのところへ向かおう。ナナはどこへ?」
「はい、先ほど見た限りでは厩舎の方に。」
「分かった。」
エルヴィンは立ち上がり、すれ違いざまにぼそりと囁いた。
「――――――今回は未遂のようだが………少しは己の振る舞いを考え直す機会になったか?」
「…………っ………!」
俺はなにも言い返せず、その場に立ちすくんだ。