第26章 落着
嫌な、感じだった。絶対に行くべきではない。
でも、女医にしか話したくないと言う患者さんも何人も診てきた。
もしその悩みが本当だとしたら、医師として無下にするのは……現に彼女はとても体調が悪そうだった。
「ナナ、何やってんだ早く戻れ!」
「………は、はい!」
同じ班であるゲルガーさんが私を呼んだ。私はハッとして思考をやめて立ち上がり、訓練に戻った。
「おいナナ。」
「はい。」
「なんかさっき様子おかしかったが、大丈夫か?」
ゲルガーさんが休憩時間に話しかけてきてくれる。ゲルガーさんは振る舞いこそ適当でおおざっぱに見えるが、実はとても周りのことを見ていて面倒見が良い人だ。
「はい、すみません………。」
「女の嫉妬は怖ぇからな、気を付けろよ。」
「なんで、そう……思うんですか?」
ゲルガーさんは私たちのやりとりなど聞こえていなかったはずだ。
「そりゃあわかるさ、あの女がアンタを見る目と、お前の様子を見てりゃあな。リヴァイ兵長がらみか?……いやぁ羨ましいねぇ。」
ゲルガーさんはあえて能天気に笑ってくれた。私は少しだけ、話してみたくなった。
「ゲルガーさんなら……話したいことがあるから一人で来いと言われたら、どうしますか?」
「あん??そんな見え透いた罠今時あんのかよ!行くわけねぇだろ!」
「そう……ですよね………。」