第26章 落着
それからさらに数日経った訓練の中で、私は隣で訓練する班のその人のふらふらとした不安定な様子が気になった。
アウラさんだ。まったく集中していない様子で、顔色も悪く見える。立体機動で飛び上がろうとした時、アンカーの片方の刺さりが甘かったのかバチンッと大きな音と共にワイヤーが弛み、アウラさんは態勢を崩して地面に転がった。
「――――――っ…………。」
慌てて私はアウラさんに駆け寄った。
「アウラさん、大丈夫ですか?……顔、傷が……!」
頬に少し擦り傷が出来ている。傷を確かめようと目をやると、アウラさんは恨みがましく鋭い目で私を見上げた。
ゾクッとした。
「大丈夫………。それより、ねぇ――――――――――」
「――――――!!」
アウラさんが少し口角を上げながら、私に囁いた。私が考えている間に、アウラさんはゆっくりと立ち上がった。
「ありがとう。じゃぁまた、あとで。」
その言葉を残して、訓練に戻っていった。
いつもなら私駆け寄ってきてくれるリンファやモブリットさん、ハンジさんはいずれも班が違い、今日は団長との打合せでリヴァイ兵士長も訓練に参加していない。
私は一人でアウラさんの言葉を反芻する。
『あなたに相談したい事があるの。夕食後8時に屋上に来て。――――――女性の医師であるあなたにしか、話せない……身体のこと……誰にも知られたくない。お願い。一人で、来てね。』