第26章 落着
「……話は変わるが、弟君から最近連絡は?」
「??いえ、特には………あの会食のあと、一通手紙が来たきりで。」
「――――どんな?」
「……姉さんを取り戻す、という宣言書のような内容でした………。返事は、していません……。」
「―――――そうか。」
エルヴィン団長はまたもや何かを考えているようだ。その精密すぎる頭の中には、何が描かれているのだろうか。とても私には想像に及ばない。
「………もう一つ。………リヴァイの様子がいつもと違うことはないか?」
「………いつもと、違う………?」
リヴァイさんとはあの一件の夜から、ろくに話せていない。私がリヴァイさんの心配を踏みにじって拒否してしまったために、なんとなく気まずい状況が続いている。
「……ないなら、いいんだ。」
「………はい………。」
団長室を出ると、ナターシャとすれ違った。
「お疲れさまです。」
「お疲れさま、ナターシャ。」
涼やかなその瞳で私を一瞥したあと、彼女は団長室に入っていった。最近団長室の付近でナターシャをよく見かける。
新兵が頻繁に団長に報告するようなことはないはずだけど―――――小さな違和感を抱きつつ、その後ろ姿を見送った。