第25章 悪巧
力なく自室の扉を開けると、そこにはリンファがいる。いつもの通り、なにか本を読んでいるようだった。
「あぁナナ、おかえり――――――。」
言いかけてすぐに、持っていた本をバサッと落として駆け寄ってきてくれる。
「なっ………どうした?!」
「…………なん、でも………。」
「なくないだろ!隠すな!!!押し込めるな!!!」
リンファの温かい叱責に、思わずぼろぼろと涙が零れる。
リンファは私の身体の細かい傷を手当てしてくれた。ことのいきさつを話すと、苦虫を噛み潰したような表情で優しく私を抱きしめた。
「あの野郎………!」
「大丈夫、未遂だし………。」
「あんたの根拠のない大丈夫は、信用しないことにしてんだ。」
「…………。」
リンファは少し怒ったような目つきで、私を見た。
「……頼れよ。あたしを。」
「………うん。ありがとう………。」
「――――――協力者がいるのが物騒だな………。このことは、他に誰が知ってる?」
「……エルヴィン団長だけ。リヴァイさんには話してないけど……きっと感づいてる。」
「……そうか。」
エミリーのことは話さなかった。確証を持てていないことで、彼女に疑いの目を向けられたくはなかったからだ。
「ハーネスの部品が意図的に壊されてたあの件も、関係ないとは思えないね。」
「うん………。」
「あたしもこれから探りを入れる。今日のその時間に不自然にいなかった奴を、少しでも絞れるように。」
「……ありがとう……、でも……無理しなくて……いいから……。」
「ねぇ、ハンジさんに相談するのはどう?モブリットさん経由なら、一般兵の方に探りをいれてもらえるかもしれない。」
「……うん。明日、自分で相談してみるね。」