第25章 悪巧
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エミリーが?まさか。そんなはずはない。考えたくない。
なにか私を許せない、疎ましいと思う理由があったのだろうか。良くない思考が頭の中を駆け巡る。
「……君を引き上げる時に、ダン・シャルロスとは私も目があった。私から話をつけよう。そこで協力者のことが聞き出せるといいのだが―――――。」
「…………はい、お手数をおかけして……申し訳ありません………。」
「最後にひとつ聞きたい。」
「はい。」
私は時間をおいて、ようやくエルヴィン団長の眼を見た。吸い込まれそうな、蒼を。
「その胸元の所有印は、ダンが?」
「………っ………!」
私は思わずシャツを掴み、胸元を隠した。が、後の祭りだ。再び目を合わせることができず視線を落としたまま、答える。
「………いえ、これは………。」
「リヴァイか。」
私の言葉にかぶせるようにその名を口にする。そのことに、私は少し震えた。
「は、い………。」
「そうか。」
エルヴィン団長は表情を変えないままコーヒーを口にした。カップをカチャ、と置いて口元にのみ笑みを張り付けて言う。
「落ち着いたら、自室に帰りなさい。ここは私が片付けておく。」
「はい………。」
「もし、協力者に心当たりが出て来たらすぐに報告するように。」
「はい。では、失礼します………。」